クリスタルガード・グラスアーマーについて、少し調べてみました

 発表、発売以来大人氣になっているクリスタルガード・グラスアーマー。モバイルデバイスや時計などのガラス面に使えるガラス強化剤です。

クリスタルガード公式サイト
http://crystalguard.jp/

 すぐにサンプルを入手できたので試したところ、その効果は絶大でした。Ustreamでそのときの模様を配信し、録画したものをYouTubeにアップしております。

 その後、商品版も購入してみました。詳しくは別途レポートいたします。


 この強化剤を使ってみて、さらに疑問が増しました。いったい何がどうなっているのか、ガラス面に液剤を塗って伸ばして拭き取るだけ、という短時間の簡単な施工だけで、なぜ、ガラスがこれほど綺麗で滑らかで頑強なクリスタルになるのか。商品説明を見た人、使用してみた様子を聞いた・見た人も、それ本当なの?大丈夫なの?と疑念を抱きやすい内容なのではないかと思います。



 ブログを書くにあたり、まずは中の人に問い合わせてみました。


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Q: クリスタルガード・グラスアーマーの成分・分量は? また、それを使うと化学的にどんな反応が起こってガラスが結晶化するのでしょうか?具体的に教えていただけますか?


A: クリスタルガード・グラスアーマーは、元々、車の塗装面にガラス皮膜を化学結合させる為に極微量配合していた成分でした。それを(フロントガラスに)使ったところ、ワイパー傷が減ったという報告があった為、その成分のみで実験を重ねました。すると、ガラス傷の修復能力や傷への耐性が実現できた為、当初はフロントガラスの硬化剤として研究を進めました。しかし、薬剤があまりにも高価な為、その商品化を断念しました。近年になって、スマートフォンの操作パネル面がガラスである機種が非常に増えた為、液晶画面のガラス強化剤として商品化するに至りました。(ごく少量ずつなので安価で商品化が可能)
 成分は、クリスタルガードシリーズの液剤に含まれているカップリング剤です。この成分が、実際にガラス表面を結晶化(ガラスの結晶=水晶)させ、硬くして傷つきにくく変化させます。ケイ酸(ガラス成分)と液剤との化学反応、ということになります。

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 というものでした。成分の具体的な内容や、化学反応の詳しい内容は伺うことができませんでした。この辺は企業秘密なのでしょう。
(12/23 追記:「クリスタルガードのフォーミュラ(成分と調合)は特許の申請もされていないほどの企業秘密であり、………」と、公式サイト内に表記がありました。)



 知りたい欲求が高まります。そこで、素人ながら自分なりにいろいろ調べてみました。以下の内容について、まとめてまいります。少しでも疑問が明らかになればと思います。



●クリスタルについて
 →クリスタルとは何か
●ガラスについて
 →ガラスとは何か
●ガラスがクリスタルに変化するということについて
 →何がどうなってガラスがクリスタルになるのか
●クリスタルガードについて







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◆【クリスタル】とは何か?

 =水晶。水晶製品。結晶(体)。クリスタル[カット]グラス(製品)。(受信機検波用)鉱石; 鉱石[ダイオード]検波器。水晶振動子。…など


 クリスタル=水晶、というのは知っていましたが、「結晶(体)」のこともクリスタルと呼ぶということを今回初めて知りました。たとえば、塩もクリスタル化(結晶化)する、ということになります。
 クリスタルガードのクリスタルは、このうち「水晶」や「結晶」の意味であると考えられます。


 順に掘り下げていってみましょう。



・「水晶」とは何か?
 二酸化ケイ素(SiO2) が結晶してできた鉱物(=石英、クオーツ)のうち、透明度が高く(特に無色透明なもの)、宝石(半貴石)としての価値を持つもの。

 色がついている水晶がありますが、あれは二酸化ケイ素以外のものが混ざっているために色がついているそうです。純度が高いほど、透明度が増すわけです。ここでは、純粋な水晶は無色透明、と考えることにします。



・「二酸化ケイ素(珪素)」とは何か?
 二酸化ケイ素(にさんかけいそ, 英: silicon dioxide)はケイ素の酸化物で、地殻を形成する物質の一つ。組成式はSiO2。シリカ(英: silica)、無水ケイ酸とも呼ばれる。圧力、温度の条件により、多様な結晶相(結晶多形)が存在する。
 結晶は共有結合結晶であり、ケイ素原子を中心とする正四面体構造が酸素原子を介して無数に連なる構造をしている。



・「ケイ素」とは何か?
 原子番号14、元素記号Si。シリコン。地球上で、酸素に次いで多い元素。ケイ素は酸素や水と結合してケイ酸となる。



・「結晶」とは何か?
 =原子や分子が空間的に繰り返しパターンを持って配列しているような物質。

 <結晶の種類>
  ○共有結合結晶
    →ダイヤモンド、ケイ素(シリコン)、二酸化ケイ素などが共有結晶を作る
  ○イオン結晶
  ○金属結晶
  ○分子結晶
    ファンデルワールス結晶(分子性結晶)
    水素結合結晶



 ここで、二酸化ケイ素の結晶であるところの水晶のもつ、繰り返しパターン配列(分子構造)を簡単な図で表してみます。

●がケイ素原子、○が酸素原子

 二酸化ケイ素の結晶である水晶は、長距離秩序(一定の繰り返しパターン)のある構造をしており、結びつきが強く安定した状態になるようです。







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◆【ガラス】とは何か?
 液体を溶融状態から冷却したとき、結晶せずに固化し、原子の配列が液体に似た不規則な状態になっている物質。三次元無規則網目構造。ケイ酸塩ガラス・ソーダ石灰ガラス・鉛ガラス、ポリスチレン・ポリエチレン、天然には黒曜石・琥珀(こはく)など。
 一般的なガラスは、ケイ酸塩ガラスが多い。

 ガラスは、クリスタル=水晶と見た目が似ていますが、その構造は非晶質(アルファモス)という、長距離秩序(一定の繰り返しパターン)はなく、短距離秩序の構造をしています。


シリカガラス(石英ガラス・アルファモス構造をとった二酸化ケイ素)

●がケイ素原子、○が酸素原子



・「ケイ酸塩ガラス(quartz glass)」 ケイ酸と金属酸化物で構成される塩を主体としたガラス。実用に供せられるガラスの大部分を占め,普通 65〜75%のケイ素(Si)を含む。


・「石英ガラス」 石英 (SiO2) から作成されるガラスで、SiO2 純度が高いものをいう。溶融石英、溶融シリカシリカガラスなどとも呼ばれる。耐食性、耐熱性にすぐれ、非常に透明なことから、ビーカーやフラスコなど理化学用途や光ファイバーの材料などに幅広く用いられる。



 通常、非晶質(アルファモス)構造、短距離秩序の構造をしているガラスは、特に「曲げ」に弱いため、壊れやすい、割れやすいものであるととらえられています。


 そこで、割れにくく傷つきにくくした強化ガラスというものがありますが、それには種類があります。「物理強化ガラス」と「化学強化ガラス」です。



・「物理強化ガラス」 軟化点近くまで(変形しない範囲で)加熱し、その後に急冷する。この熱処理で表面層と内部の密度差をつけることによって応力場が形成される。表面に圧縮応力層、内部に引張応力層ができる。この表面の圧縮応力層が強さになるようです。ある程度の傷には耐えるが、度を超えると一氣に壊れるとのこと。車のフロントガラスなどがそれだそうです。



・「化学強化ガラス」 スマートフォンタブレットなどでよく使われるコーニング社のゴリラガラスや旭硝子のドラゴントレイルは、この化学強化ガラスです。

 ガラス内部のアルカリイオンを他のアルカリイオンに変換し(イオン交換)、ガラス表面のみに圧縮応力層(強化層)をつくる。
 ↓
 ナトリウム(Na)イオンを含有したガラスを、カリウム(K)イオンを含有した水溶液に浸けておくと、ガラス表面のNaイオンと溶液中のKイオンが交換し、Kイオンがガラスの表面層に進入していく。KイオンはNaイオンよりも大きいので、表面の密度が増す。これが強さになるようです。



 物理強化ガラスも化学強化ガラスも、通常のガラスよりは傷つきにくいし割れにくいものです。しかし、それでもやはり度が過ぎれば傷はつくし、割れます。



 実際に使ってみて、クリスタルガード・グラスアーマーは強化ガラスをもさらに強化するものでした。何をどうすることで強くなるのか。







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◆ガラスが液剤と反応してクリスタルになる?

 モース硬度という、硬さの段階というか順番を表す硬さの尺度があります。1〜10まであり、最強の硬さが10。

ダイヤモンド 10
ルビー、サファイヤ 9
トパーズ 8
水晶(石英)、翡翠 7
トルコ石 6
通常のガラス 5〜6
蛍石 4


 硬さの順番を表す数値であるため、数値間の度合いはバラバラだそうです。水晶は、ガラスより硬いがサファイヤより硬くない、ということになります。


 また、押し込み硬さを表す尺度のビッカース硬度というものでは、


サファイヤ 2300(人造サファイアはそれより低い)
石英(水晶) 1100
ドラゴントレイル 673
ゴリラガラス 650


 サファイヤには負けますが、水晶もなかなかの硬さであることがわかります。



 SiO2+α(ナトリウムイオンやカルシウムイオンなど。石英ガラスはSiO2のみ)でできていて非晶質構造のガラス。二酸化ケイ素SiO2の結晶である水晶=クリスタル。

 ガラスからクリスタルになるには、SiO2のみを用いて結晶化する必要があります。



天然の水晶が生成される過程は、

高温高圧な熱水鉱床の密閉過程

針状結晶の急速成長(ゆっくりとした温度降下と圧力低下の中で)

大型結晶の緩慢成長(温度降下緩やかに)

と三段階を経るそうです。


 人間が利用するにあたって、この生成過程を待ってはいられません。そこで、化学反応による結晶化です。
 車のコーティング剤であるクリスタルガードは、車の表面にクリスタル被膜をつくるもの、とのこと。液剤の中にクリスタル成分SiO2が含まれており、それを結晶化させる何かが入っている、ということになります。実際にモース硬度7であるそうですから、水晶と同等、水晶である、結晶になっている、と言って良いでしょう。非晶質・アルファモス構造から結晶構造へ変化させる何か・・・化学者であれば、成分分析・解析、化学反応を調べることができるのでしょうね。







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◆クリスタルガードとは?

 kozmez社の主力クリスタルガード製品は、自動車用のコーティング剤です。

○クリスタルガード・ワン(反応型)
○クリスタルガード・プロ(ワンの強化版、反応型)
○クリスタルガード・オープライム(硬化型)
○クリスタルガード・ゼロ(ワン+汚れ落とし剤、反応型)
※反応型=化学反応型



 反応型のコーティング剤は、クリスタル成分SiO2を含み、それを化学反応により結晶化させているもの。


 硬化型のオープライムは、艶出しと傷埋め効果をもたせたベースコーティング剤で、主剤がポリシラザン。


・「ポリシラザン」 正式な物質名はパーヒドロポリシラザン(ケイ素・窒素・水素のみから構成される化合物)。常温で緻密なSiO2へ転化する。


 これらはどれもクリスタル成分を含んでおり、それを結晶化・水晶化させてガラス面ではない車のボディをクリスタル被膜でコーティングするものです。



 今回のクリスタルガード・グラスアーマーは、これらクリスタルガードに含まれている、ある成分を使った製品で、ガラス面を化学反応により結晶化させるものです。非常に高価なものとのことなので、液剤を無駄にせず大事に使いたいですね。





 限られた時間の中でいろいろ調べてはみましたが、成分が何なのか、どんな化学反応なのか具体的なところは見つけられませんでした。もしわかった方がいらっしゃったら、ぜひ教えていただきたいです。

 その効果自体は、使えば納得のいくものであります。次のレポで詳しく書いてまいります。